お知らせ・活動だより


活動報告

森林整備に向けた取組
需要直結型の間伐促進

2018.03.03

取組紹介

木の家の部材に関するニーズ共有

設計士や大工が講師役を務め、森林組合作業班や森林所有者の方々向けに、木造住宅ではどのように間伐材が使われているかの実態を知っていただくための研修会を開催しました。

当会のモデルハウス“もりいえ”を見学いただき、実際の木造住宅ではどのように間伐材が使われているかを知っていただきました。「どのような寸法の木材が使われるか」「節の出やすさと製材」について、また当会独自の工夫による「間伐材など小径木を使う工夫」や「曲がり材を使う工夫」についてお伝えをしました。

間伐・造材実習

林業家と設計士とが共同で講師役を務めて、山で間伐・造材の実習を行いました。地元で長く林業を営んできた林業家が伐採・搬出・造材技術を、木造住宅を多く手がけてきた設計士が木に求めるニーズを伝えました。実際の山仕事を通じた研修も継続的に行いました。

森林組合作業班の方々は、これまでは機械的に3m材を造材しておられました。一方、家づくりのニーズから考えると、せっかく4m、5m、6mなど長い材が取れる原木でも機械的に3mに造材されているのは、もったいないとの思いがあります。通直な長材が取れるものは価値が高い梁材に、などの工夫をすることで、山に還せる経済効果が大きくなります。

作業班にこのようにお勧めしたとき、「ではどのような着眼点・判断基準で造材すればいいのか」、「どの材を取るべきか、その優先順位は?」などの具体的な疑問点が挙げられ、議論を深めることができました。

伐採から搬出・造材の作業をひと通りご一緒して実感したことは、地域の森林整備を進めていくためには、森林組合作業班の方々の技術力が大きなカギとなっているということです。

これまでは、地域の林業は「植えて育てる林業」の段階でした。人工林の生長が進み、これからは「利用しながら循環する林業」へ転換していかねばなりません。そのための木材搬出や造材の技術を、一層高めていくことが求められています。

製材研修

研修を進める中で、研修に参加いただいた森林組合作業班の皆さんからは、「搬出・造材技術と、最終製品としての住宅をみるだけでは、その間のつながりが分かりにくい」という声があがりました。そのため、造材した木の製材を見学してもらう研修会を、追加的に行いました。

作業班の皆さんは、「自分たちが伐った木を、どのように製材するのがいいか」という問いを製材技術者にぶつけたのですが、製材技術者からは「それは考えが逆。原木を調達する際に、既に用途は決まっている」との答え。造材してから何に使おうかと悩んでいるようでは駄目、製品をイメージして造材しなければならないという、作業班の皆さんにとっては発想の逆転を学ぶ機会になりました。

森林整備ワークショップ2011での取組発表

森林整備ワークショップ2011(平成23年1月25日)において、本事業の取組発表を行いました。

伐られた材がどのように製材、加工されて家になるか、その過程を知れば、木を活かす取組の始まりは森にあることに気づきます。製材では寸法により節の出やすさの違いがあること、間伐材でも構造材として使えるよう設計・施工上の工夫があること、今まで価値が認められなかった曲がり材も棚やカウンターに使えることなど、ニーズを把握すれば森での施業が変わることを発表しました。

家をイメージしながら木を伐れる高い技術を持った林業技術者の育成が、間伐材の有効利用を高めると同時に、木造住宅産業を持続するための重要なカギのひとつだと私たちは考えています。

また、完成した家や住まい手の喜ぶ顔を見ることで、林業は、なくてならない仕事であることを改めて認識し、山仕事の活力を取り戻すことにもつながると考えています。

森林整備ワークショップ2011

■日 時 平成23年1月25日(火)
■主 催 全国森林組合連合会(株)アミタ持続可能経済研究所
■後 援 林野庁
■場 所 国立オリンピック記念青少年総合センター
■日 時 平成23年1月25日(火)
■主 催 全国森林組合連合会(株)アミタ持続可能経済研究所
■後 援 林野庁
■場 所 国立オリンピック記念青少年総合センター

今後に向けた検討会

一年間の取組を振り返り、今後の取組方針を検討する検討会を開催しました。

意見交換では、継続的な技術研鑽の場を求める声などが挙げられました。また、山村に住まいを持ち定住できるようにすること、そのための山村側の受入態勢や仕組みづくりを求める意見も挙げられ、活発な意見交換となりました。

最後の検討会や、事業全体を通じて、以下のような感想などが寄せられました。

森林組合作業班の声
  • これまでは保育が主な仕事で、森を作ることだけに頭が向いていたが、育てている木をどう使うかという発想は新鮮に感じた。
  • 決まったこと、指示されたことをやるだけの仕事ではいけないとの思いがあった。また、個々の作業をする際に、これは本当に地域の山のためになるのだろうかと自問することもあった。そのように思う中で、このような研修の機会を設け、まとまった取組ができて良かった。
  • 研修は大変楽しく得るものが多かった。その一方、まだ消化しきれていない部分が多いと思う。一体験にしてしまうと、もったいないと思う。
  • 研修だけでは続かないと思う。木材の出口、林業の仕事を続けていけるような経営的な何かがないといけない。
  • 厳しさも必要。自分たちの取組が仕事につながっていくことも必要だ。
  • 山仕事の経験が浅いので、今までは切り捨てばかり。材にする木を伐ることはあまり経験が無かった。いままでは、40、50年の木は伐りにくい気持ちがあった。研修で、気持ちが引き締められた。倒すだけのことを考えていたが、出すとなると、伐ることにも考えることが多くなった。技術的なことももっと勉強せねば。
森林所有者の声
  • 森林所有者の方々は、特に、「曲がり材」などこれまで価値がないと思われていたものでも利用価値を生み出しうるということに高い関心を持った。
  • 対話を重ねる中で、間伐と山への思いを新たにした。
  • この取組でも森林所有者側の広がりをもっと広げなければならない。また、森林所有者の高齢化が進む中で、これからの山の管理、森林経営を含めて、森林組合作業班への期待は大きい。
  • 森林組合作業班には、地域の森林・林業を背負う担い手として育ってもらいたい。「あのグループなら任せて安心」「一緒に学びたい」「一緒に仕事したい」という集団になっていくことで、地域全体を守っていけるのだと思う。
設計士の声
  • 丸太の状態から、どのように製材され建築に使われているかを体感した。思ったよりも大きな木を使ってきたのだと改めて実感した。
  • 会で取組んでいる「地域にある間伐材をできるだけ活かした設計」について、小径木を生かし、梁材などに用途を拡大していくことは、地域の木材資源を活かす意味で重要であるということを改めて確信した。
  • 地域にどのような木があるかを知り、無駄なく丁寧に木を使うことが、地域の建築関係者には求められると思う。